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2023.10.23
ラフランスの生産は日本だけ?海外で絶滅し日本で成功した理由を解説

「バター・ベア(とろける梨)」という別名も持つほど、なめらかな食感が人気のラフランス。

しかし2023年現在、世界でラフランスを生産している国は日本だけの可能性があるというのをご存知ですか?

この記事ではラフランス栽培が日本で成功した理由と歴史、海外で絶滅状態に陥っている原因について解説します。

ラフランス栽培が日本に根付いた理由を知りたい方は、ぜひ読んでみてくださいね。

ラフランスの原産国フランスでは絶滅した?

ラフランスは、1800年半ばにフランスで初めて発見された西洋梨の一種です。

上品で濃厚な味がフランスを代表する果物だと評価され、「ラ・フランス」という名を与えられたとされています。

しかしラフランスは、フランスで1900年代始めに絶滅したと考えられており、世界でも日本でしか栽培されていないようです。

なぜラフランス栽培は日本だけなのか

ラフランスが日本でのみ生産されフランスで絶えてしまった大きな原因は、他の果実と比較して栽培が非常に難しいためです。

・長雨や強い風など悪天候の影響を受けやすい

・収穫の時期と台風のシーズンが被る

・病害に弱い

・実ができてから収穫まで他の洋梨よりも1ヵ月長い

・開花してか実がつくまでに5ヵ月程度か

このようにラフランスは非常に繊細な果物のため、自然環境や栽培者の技術に生産量が大きく左右されます。

原産国のフランスは気候や自然環境がラフランス栽培に適しておらず、廃れてしまったとされています。

一方日本は山形県などで栽培条件をクリアできたため、安定したラフランスの供給が実現しました。

山形県が栽培条件に適している理由については、後述します。

日本のラフランスが世界一の生産量になるまでの歴史

栽培の難しいラフランスが日本に根付くまで、100年以上かかったと伝えられています。

ここからは、ラフランスが日本に根付くまでの歴史について詳しく解説します。

明治初期に西洋梨やラフランスが日本に渡来

西洋梨は明治8年頃、ラフランスは明治26年頃に山形県に渡来したと言われています。

しかし和梨に慣れていた日本人は、西洋梨の栽培の大変さや食べ頃の見極め方の難しさに戸惑い、西洋梨の普及までに至りませんでした。

実際に西洋梨の栽培が活性化し始めたのは、明治42年頃です。

山形県を訪れた大正天皇が西洋梨「バーレット」の苗を賜ったのを機に、西洋梨栽培に光が当たります。

ラフランスの役目はバーレットの授粉樹

明治42年から西洋梨の生産が活気づきましたが、ほとんどは缶詰用のバーレット。

ラフランスがバーレットよりも普及が遅かった原因は、以下の3点です。

・他の西洋梨よりも栽培が難しい

・追熟の見極めが必要

・凸凹した見た目が不格好

ラフランスは食べ頃になるまで手間がかかるうえ、不均等な見た目のせいで山形県では「みだぐなす(見た目がよくない)」と敬遠されていました。

一方バーレットの授粉樹として相性がよいと判明し、バーレット畑の隅に植えられることで細々と生き延び続けます。

ラフランスの大量生産は渡来から100年後

ラフランスが日本中の食卓で食べられるようになったのは昭和60年代頃、苗の渡来から約100年経過していました。

昭和40年頃まで今まで缶詰の果物を食べるのが主流だった日本で、果物の生食が流行したことがきっかけとなり、ラフランスにも注目が集まったのです。

同じ頃ラフランスの研究も進み、栽培に適した自然環境や追熟の条件が明らかになったため、安定した供給が実現できるようになりました。

今日では山形が生産する西洋梨の7割近くをラフランスが占めるほど、秋の味覚としてメジャーなフルーツに昇格しています。

全国第1位!ラフランス生産が山形に根付いた理由

世界で唯一ラフランスの栽培に成功している日本。

そのなかでも生産量1位を誇るのが山形県です。

農林水産省による令和4年度の「西洋梨の都道府県別収穫量」の調査結果は、以下のとおりです。

生産地収穫量収穫量割合
全国26,700t100%
山形県18,200t68%
新潟県2,110t8%
青森県1,870t7%
その他4,520t17%
引用:農林水産省「令和4年度西洋梨の結果樹面積、収穫量及び出荷量

山形県が全体の68%を収穫しており、2位以下と圧倒的な差があります。

そのなかでもラフランスは、山形県の西洋梨栽培面積の約65%を占めています。

山形県がラフランスの名産地になった主な理由は2点です。

・ラフランス栽培にぴったりな盆地気候と豊かな土壌

・ラフランスの品質を保つために収穫解禁日の設定

ひとつずつ詳しく解説します。

ラフランス栽培にぴったりな盆地気候と豊かな土壌

盆地にある山形県は、昼夜の温度差が大きい気候が特徴です。

その昼夜の温度差がラフランスなどの西洋梨に適しており、大きくて甘い果実に育つよう促してくれます。

また盆地の地域は高い山に囲まれており、

・梅雨時期の降水量が少ない

・台風の強い風を山が遮ってくれる

このようなメリットがあるため、長雨や風に弱いラフランスが育ちやすい自然環境が実現しています。

さらに、冬の雪が春に解けて綺麗な湧水となって土壌を潤す点も、山形県でラフランス栽培が発展した理由のひとつです。

ラフランスの品質を保つために収穫解禁日の設定

山形県ではラフランスの生産量や品質を安定させるため、毎シーズンごとにラフランスの収穫に最適な解禁日を設定しています。

解禁日は山形県とJAが協力して天候や糖度などを調査し、ラフランスの収穫に最適なタイミングを見極めます。

毎年10月の上旬から中旬に設定される場合が多いですが、令和5年度の収穫解禁日は例年より少し遅い10月27日(金)に決定しました。

山形県では他にも、ラフランスの消費拡大やブランド力強化のため、高品質安定生産の推進やPR活動に県を挙げて取り組んでいます。

日本でラフランスが愛されるワケ

日本でラフランスが根付いたのは、栽培方法を確立して生産が安定しただけでなく、その独特な味と香りにも理由があります。

洋梨の女王とも呼ばれるラフランスは、他の果物にはない滑らかな舌触りと芳醇な果汁が魅力的です。

ラフランス特有の芳香な香りも、日本人の心を掴んで離しません。

皮剥きや食べ頃の見極めに手がかかるラフランスですが、ラフランスでしか味わえないとろけるような食感と味で揺るぎない地位を築いています。

日本のラフランスは海外にも進出

近年、日本のラフランスは海外でも評価が高く、とくに台湾や香港、シンガポールなどアジア諸国に輸出されています。

またラフランスのルーツでありながらも絶滅してしまったフランスに、日本が苗を寄贈する取り組みもおこなわれています。

明治に日本に渡来してすぐに、フランスで食べられなくなってしまったラフランスですが、今度は日本のラフランスがフランスで実をつけるかも知れませんね。

まとめ

実がついてから収穫までの期間が他の西洋梨よりも長いラフランスは、栽培が非常に難しく、海外では姿を見なくなりました。

唯一生産が安定している日本でも、病害や台風に弱いラフランスをベストな状態で出荷できるよう、農家さんたちが試行錯誤してきた歴史があります。
ラフランスが旬を迎えたら、ぜひラフランス特有の滑らかな食感と味を堪能してくださいね

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